Scarsdale
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ロシュ・ハシャナー、ヨム・キプール、スコット、シムハット・トーラー(ユダヤ教の秋祭り)    
          2006年9月

Shofaユダヤ教では9月から10月にかけて大切な祝祭日が続きます。まず、ロシュ・ハシャナー(「ロシュ」はヘブライ語で頭、「ハ」は英語のtheにあたる冠詞、「シャナー」は年という意味)と呼ばれる新年。聖書のレビ記に「第七の月一日をあなたの安息の日とし、ショーファー(角笛)を吹き鳴らして記念する聖なる集会の日としなさい」と神がモーゼに命じたことが記されていて、この第七の月の最初の日がロシュ・ハシャナとして祝われている訳です。第七の月が何故新年かというと、聖書で言う第一の月は過越しの祭のある「ニサン」の月、4月頃にあたるからで、第七の月、「ティシリ」は9月から10月頃に相当するのです。週の七日目が安息日で聖なる日であるように、月の第七番目は一年のうちで聖なる月だとされるようです。

ロシュ・ハシャナー(ユダヤ教の新年)

ユダヤ歴で5767年日にあたる今年の「ロシュ・ハシャナー」は、9月22日の日没に始まります。この日を前にして今ユダヤ人の間ではお互いによる年賀状の交換が盛んです。ロシュ・ハシャナーは日本で言えば元旦にあたりますが(日本と違うのは元旦が2日もあること。これはかって満月の日を間違えないようにと念のためもう一日祝っていた習慣が今も残っているためとか)新年と言う場合広義には10日後のヨム・キプールまでをさし、この間はユダヤ人にとって一年の最も神聖な時期とされています。

わが家もロシュ・ハシャナーを迎える日没には普通の安息日のようにキャンドルを灯し、ワインとハラ(おきげ髪のように組んだパン。普通は楕円形ですが新年の間は神の王冠をイメージして円形になっています。1年を丸くスムーズに過ごせますようにという意味も含まれています)でお祈りを捧げます。その後りんごやハラにハチミツをつけて食べ、ツィメスと呼ばれる果物や肉、野菜などに蜂蜜を入れて低温で長く煮込んだシチューのような料理を食べます。蜂蜜の入った甘い料理が多いのは、新しい一年が蜜のように甘い過ごしやすい年となるようにとの思いが込められているからです。家族によってはこの日、年頭に因んでこのほかに頭のついた魚料理を食べる所もあります。食事のあとと翌朝、それから次の日もシナゴーグへ出かけます。新年の間の挨拶は「シャナ・トバー!」とか「グッド・ヨンテフ」(よいお年を!)などです。もちろん「ハッピー・ニューイヤー!」と声をかけあう人もいます。

新年の間の礼拝の特徴はシナゴーグに角笛が鳴り響くことです。角笛の音は神と人間の関係の象徴として見なされていて、人々はその音を聞きながらアブラハムの信仰を思い起こし、信仰のあるべき姿を心に深く刻みます。角笛として雄羊の角が使われているのは、形が曲がっていて衝動を抑える音が出ることや、天に対して高ぶらない心を表しているのだそうです。

新しい年を迎えるということは、過ぎ去った年を精神的に清算する時でもあり、ロシュ・ハシャナーからヨム・キプールまでの10日間は、「悔い改めの日々、立ち帰りの日々」ともみなされています。そこでシナゴーグでは過ぎし年に犯した罪、故意だったにせよ無意識だったにせよ、誰かを苦しめたかも知れない罪などをに対し許しを求めて祈ります。

ヨム・キプール(贖罪日)

ロシュ・ハシャナーの後、十日目に贖罪日(ヨム・キプール)がやってきます。これは十日間の悔い改めの期間の最後を締めくくるユダヤ人にとってもっとも聖なる日です。民数記に「七月の十日に聖会を開き、苦行をしなければならない」と書かれていて、「苦行をする」とは断食を意味するとユダヤ教の伝承は解釈しているのです。そのためこの日は13才以上の成人は一日中飲食をしません。(断食の程度はユダヤ教の伝統習慣に従って度合いで人によって違いがあります。中には全くしない人もいます。)この日シナゴーグではほぼ一日中礼拝が行われており、多くの人が終日ここで過ごします。今年はヨム・キプールの礼拝中に私も「ハフトーラー」と呼ばれるトーラー(ユダヤ教聖典)本文に関連する預言書の一部をヘブライ語で朗誦しますので、今練習しているところです。シナゴーグでのヨム・キプールのお祈りの中には広島や長崎の悲劇が再び繰り返されないことを誓う箇所もあります。

スコット(仮庵の祭)

スコットヨム・キプールの5日後、ティシリの月の15日にスコット(仮庵の祭)がやってきます。これはレビ記にある「あなたがたは七日の間、仮庵に住まなければならない……これはわたしがイスラエルでの人々をエジプトの国から導き出したとき、かれらを仮庵に住まわせたことを、あなたがたの子孫に知らせるためである。私はあなたがたの神、主である」と言う箇所を起源とする祭りです。仮庵のことをヘブライ語でスカー(スコットはその複数形)と言いますが、仮庵を建てるのは、約束の地に行く途中で荒野に四十年間流浪したことを記憶するためです。シナゴーグやユダヤ系の学校では(自分の家の庭先に作る人もいます)草ぶきの小屋を敷地内に建て中を秋の草や果物で飾ります。神聖で厳かなロシュ・ハ・シャナーやヨム・キプールと違ってこちらは1週間仮庵の中で食事をしたりしますので子どもたちにも人気のある楽しい祭りです。ちょうど秋の収穫の季節にあたりますから、春の過越し祭(ペサハ)、七週の祭り(シャブオット)と並んで、農業祭の一面もあります。(写真は我が家の属するスカースデール・シナゴーグの祭壇の前に捧げられた秋の収穫物(左上)と裏庭に作られた仮庵) 

シムハット・トーラー

Torahスコットの一週間後には「シムハット・トーラー」というお祭りが続きます。ユダヤ教では、トーラー(モーセ五書)を毎週少しずつ読んでいき、一年かけて読み終えますが毎週どの箇所を読むかは、全世界のユダヤ人に共通して定められていてどこにいてもこの日に申命記の最後の部分を読み終わり、創世記の最初の部分が読み始められるのです。シムハット・トーラーとはトーラーを読み終えた喜びと感謝を表すという意味でそれが終わると大きな巻き物のトーラーを先頭に人々が浮かれてシナゴーグ中を踊りまわります。

私もこれまで何度かその後についていったことがありますが、人々の嬉しそうな様子に接っしながら何千年もトーラーの教えを基に伝えられてきた伝統の意味が何となく分かるような気がしていつも感慨無量の思いにおちいったものです。

シムハット・トーラーが終わるとお祭りのシーズンも終わり、日ごとに深い秋の深まりを感じるようになります。

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