Scarsdale
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奉仕活動にお年寄り感激  教育文化交流センター設立される (読売 June 24, 1994) 

お手前を披露するメンバーの一人、木原さんニューヨーク日本人教育審議会が、グリニッチ・ニューヨーク日本学校のキャンパス内に教育文化交流センター(文部省派遣ディレクター・合田隆史氏)を設置して七ヶ月。センターでは専門家による教育相談のほか、情報提供のためのライブラリーの充実、定期的な日本人向けのオリエンテーションなど、ボランティアの活動も徐々に軌道に乗り出している。五月二十七日と六月六日には、コミュニティを対象とした初のプログラム、「日本文化紹介」も実施された。「メリー・ゴー・ラウンド・ミューズ」ーというナーシングホームと、「グリニッチ ・シニア・シティズン センター」からの要請に答えたものだ。

センターを訪れたお年寄りたちは、出迎えたボランティアに手を引かれてキャンパス内のチャペルなどを見物したあと、五、六人のグループに分かれてお茶、お花、習字、折り紙をそれぞれ約二十分ずつ楽しんだ。参加者たちは、訪問の間中、口をそろえて「ワンダフル」を連発、習字や折り紙の手解きには、「久しぶりに学生にかえったような気分」と大はしゃぎだった。シニア シティズン センターの参加者の一人、ドリス ニュートンさんは、訪問の感想を聞かれて、「生まれてはじめての経験。日本文化もすばらしいけれど、こうしてたくさんの日本人のみなさんにお会いできたのはもっと感激。」と答えている。 

「今88才の姉がこの学校の前身、ローズマリスクールで40年働いていた。その頃よくここに来ていたので懐かしさで一杯。この学校の変遷はよく知っているが、手入れは今の方がずっと行き届いているし、以前の学校からこんなふうに招待されたことなど一度もなかった。」と、日本人学校やセンターの地域交流に対する姿勢を高く評価するのは、ルイズ ヤントルノさん。彼女も「本当にいい思い出が出来た。是非また来たい」と口を極めて訪問の喜びをあらわしていた。 

お年寄りに習字を教えたコネティカット州ダリアン在住の岡栄里子さんは、「筆を握る皆さんの目が好奇心に輝いているようだった。雰囲気も和やかで、一緒にいて本当に楽しかった。私はプロではないので、上手に教えたりは出来ないけれど、大事なのは普通の一日本人としての皆さんとの『交流』なので、こうして喜んでいただいたことで十分その目的は果たされたと思う。」と語っている。岡さんは、センターでプログラムを企画したり、ライブラリーの整備、ニューズレターの発行にあたるなど、奥村環さん、井上久仁子さん、鈴木みえこさんらとならんでボランティア主要メンバーの一人。彼女は、センターでのボランティア活動について、「日本人の子供たちの教育を支援し、日米の教育文化交流を促進させると言うセンターの趣旨に賛同する人たちが、子供の学校に関係なく、こうしていろいろな地区から集まって一緒に仕事が出来るのは本当にすばらしい。」と話す。

プロとして教える資格もある茶道の伊藤幸恵さんは、友人の河口敦子さんとボランティア教師をつとめた経験について、「アメリカ人に喜んでいただけて嬉しかった。日本人とアメリカ人がいろいろな形で交流出来るこうしたセンターが出来たのはとてもいいことと思う。」と語っている。華道教師の蔵原由季子さんも、「とてもいい経験だった。今後も積極的に参加したい。」と意欲的だ。

オールド グリニッチに住む前田茂子さんは、アメリカにはこの三月にきたばかり。センターが主催したオリエンテーションで「日本紹介」のことを聞いて参加した一回目が面白かったので、二回目は運動会の代休で休みだった二人の子供も連れて来たと言う前田さんは、「英語に自信がなかったので最初は参加を躊躇したが、『にこにこ部隊』の一員としてお年寄りに笑顔で接すると言うだけでも立派なボランティアの第一歩とすすめられて、それなら自分にも出来ると思った。皆様に喜んでいただけて、自分も楽しかったし、ボランティアに対する認識をあらたにした。今後も出来る限りのことをしたい。」と話している。 お友達や弟の創平君と一緒にお母さんについて参加した前田佳帆里さんは、「英語が話せないので緊張したが、身振り手振りで教えてあげたら何とか通じたし、折り方を忘れて慌てて本に目を通したことも何度かあったけれど、お年寄りに喜んでもらえて嬉しかった。」と、折り紙の知識が役にたってちょっぴり得意そうだった。

センターでは、これからもいくつかの「日本文化紹介」プログラムが予定されており、日本人へのオリエーテーションと並行してボランティアの活動は今後も忙しくなりそうだ。これについてディレクターの合田隆史さんは、次のように語っている。

「気負いも衒いもないボランティアの人達から私自身多くのことを学んだように思う。こういう人達一人一人がセンターの主役。グレーターニューヨークのそれぞれのコミュニティで同じような志を持つ人達が気軽に自分たちの交流を持つ、そのためのリソースセンターとしてこのセンターを力をあわせて充実させていきたい。」

なお、センターではそれぞれの地区で日本紹介をされる方々のために要請に応じて貸し出しが出来るよう、教材、書籍、ビデオ、玩具、着物などの寄付を呼び掛けている。

(プログラム・ディレクター/ボランティア・オーガナイザー キャッツ邦子)

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「ジャパン・オン・ウィールズ (Qbic Factory Publication, June, 1997)

グリニッチの老人ホームの皆さまをセンターにご招待「ジャパン・オン・ウィールズ」は、教育文化交流センターのボランティア活動プログラムです。老人ホームや学校などを訪問、「日本」や「日本文化」をお届けする所から、こうした名前がつきました。年に2度、春と秋には、4週間ほどのシリーズで地域の皆様をセンターにお招きし、折り紙、習字、お茶、お花、着付け、日本舞踊、お琴の演奏などを通した日本紹介を行っています。活動の目的はもちろん地域の皆様との交流です。

教育文化交流センターがグリニッチ日本人学校の敷地内に設立されたあと、私がセンターの活動の一環として先ずこのプログラムを企画したのは、それまでの自分自身の経験から、皆様の中に「地域のために何かしたいと思うのだけれど、英語がネックで..」とか、「ボランティア活動をはじめてみたいのだけれど、やり方が..」、などと躊躇しておられる方々が多いことを知っていたからです。そうした方々が機会を得ることで、持てる力を発揮し地域に貢献される様子もよく目にしていました。そこで、センターのニュースレターを通して、皆様に交流活動への参加を呼び掛けてみたのです。すると、すぐに何人かの方々に連絡をいただきましたので、その方々と話し合って先ず近くの老人ホームを訪問することから活動を始めました。あれから3年余、帰国や転勤でメンバーの変動は避けられませんが、交流の輪は今も静かに広がっています。

「ジャパン・オン・ウィールズ」のモットーは、「自分に出来ることを、無理しないで」と言うものです。「英語が出来ないので、『アメリカでボランティア活動なんて』と、思い込んでいましたが、活動に参加して、人と人との触れ合いには言葉より大事なことがあることを身にしみて学びました。」とご自分の体験を語られるメンバーは少なくありません。私も滞米26年余、いろいろなボランティア活動に参加してきましたが、特にセンターで皆様のお手伝いをさせていただくようになってから、コミュニケーションに不可欠なのは、流暢な言葉より、むしろ気持ちであることを以前にもまして感じるようになりました。「何かをしたい、伝えたい」と言う思いがあれば、「いかに上手に伝えるか」と言ったことに拘泥せずともそれは必ず相手に伝わるもので、そのことを皆様が活動の中から実感として体験されるのを目にするのは、私にとってかけがえのない喜びとなっています。

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